理学療法士のパラスポブログ

障がい者スポーツを通してより良い社会の実現を!理学療法士に何ができるか考えます。理学療法士/中級障がい者スポーツ指導員/クラシファイヤー

Cluster analysis of novel isometric strength measures produces a valid and evidence-based classification structure for wheelchair track racing

[クラス分け論文シリーズ②]

前回から急に始まった論文紹介。科学的根拠に基づいたクラス分けが求められていますので、まずは先行研究を読むことから始め、いつかは自分自身も研究したいと思っています。

3月にオーストラリアを訪問し、国際パラリンピック委員会のリサーチセンター等を視察する予定ですので、とにかくそこの先生方が関わった論文を読んでいきたいと思います。前回は水泳についてでしたが、今回は陸上競技

Cluster analysis of novel isometric strength measures produces a valid and evidence-based classification structure for wheelchair track racing | British Journal of Sports Medicine

 

新しい等尺性筋力評価方法のクラスター分析は、車いすトラックレース競技における妥当で根拠に基づくクラス分け構成を生み出す

要約

背景 パラ陸上車いすレースのクラス分けでは、そのクラスが同程度の運動制限の障害を持つアスリートから構成されることを保証するために最善の方法が用いられている。しかし、意思決定の多くが主観的であり、この主観性を減らすために科学的な根拠が求められている。

目的 車いすレースのクラス分けにおいて、等尺性筋力評価が妥当なのかどうか、筋力評価方法のクラスター分析が妥当なクラス分け構成を生み出すかどうか、を評価することを目的とする。

方法 T51T54のクラスから32名の国際レベルの男性車いすレーサーを対象とし、肘伸展筋群、肩屈曲筋群、体幹屈曲筋群、前腕回内筋を評価する6つの等尺性筋力テストおよび2つの車いすパフォーマンステスト(015mおよび絶対値の最大速度)を測定した。車いすパフォーマンスと強い相関の見られた筋力測定方法はクラスター分析にて、結果の妥当性が分析された。

結果 6つ全ての筋力テストはパフォーマンスと相関があった。クラスター分析は合理的な全体構造や大きな筋群間で筋力の違いのある4つの群を生み出した。6名(19%)のアスリートは現在のクラスと一致しない群に割り当てられた。平均的なパフォーマンスにおいて、分析の結果として分けられた群は明らかに断層的なクラスとなった一方で、現在のクラスは断層的にならず、T53T54の間に差は見られなかった。

結論 等尺性筋力評価でのクラスター分析は、同程度の運動障害を持つアスリートから構成されるクラスを生み出した。 今回報告されている筋力テストは新しく、より透明性が高く、より主観性の低い、車いすレースのクラス分けシステムの基礎を提供することができると考えられ、より大規模なサンプルでの再現が待たれる。この論文は他のパラスポーツにおける根拠に基づくクラス分けシステムの構築に向けた一助ともなる。

 

[感想]

前回同様、筋力評価について。筋力評価そのものに関しては根拠もしっかりしていて間違いないと思いますが、現在のクラス分けシステムと合ってない場合もあるって話です。筋力だけでクラスを決めている訳ではありませんので、しょうがない気もしますが、より妥当性の高いクラス分けシステムが求められているってことですね。

少なくとも言えることは、「筋力評価はしっかりできるようにならないと!」ということ。MMTの本も原著第10版が出てるから買おうかな。

A battery of strength tests for evidence-based classification in Para swimming

パラ水泳での根拠に基づいたクラス分けのための筋力評価バッテリー

 

この研究では、パラ水泳における根拠に基づいたクラス分けのために等尺性筋力評価の妥当性を検証した。30名の健常者と42名の身体障害のあるパラ水泳選手が、自由形泳法での運動制限を説明するためにデザインされた等尺性筋力評価バッテリーを実施した。
利き肢、非利き肢の筋力や対称性に関わる測定方法は、健常者群で信頼性のあるとされた4つの筋力評価を参考にした。
パラ水泳選手は健常者に比べ、筋力評価で低い値を示し、筋力評価バッテリーはランダムフォレスト演算法(機械学習)を用いて、95%のパラ水泳選手をクラス分けすることができた。ほとんどの筋力測定法でパラ水泳選手の自由形での最大水泳速度との間で軽度から中等度の相関が見られた。
しかし、筋緊張亢進や筋力低下を伴うパラ水泳選手を単独で分析したところ、相関はほとんど見られず、パラ水泳における障がい特有の運動制限を強調する結果となった。まとめると、筋力評価バッテリーはパラ水泳クラス分けにおいて選手の筋力低下を推測し、最低出場要件基準を先導し、そして、パラ水泳パフォーマンスにおける筋力障害の影響を明確にするためには有効である。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02640414.2018.1504606

 

【感想】

結局、本文が読めないとどんな筋力評価を行なったか分からない!

全豪オープン車いすテニス

先日まで行われていた全豪オープン・テニス、車いすの部は

男子:グスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン)

女子:ディーデ・デフロート(オランダ)

クァード:ディラン・アルコット(オーストラリア)

がそれぞれ優勝しました!

 

ハイライトはここで観れます。

ausopen.com

IPCのウェブサイトより、アルコット選手のインタビューを抜粋。

https://www.paralympic.org/news/dylan-alcott-aces-australia-day

 

“Today was a really special day, When I was 14 years old, I was lying in bed, and all I wanted to do was make it in the mainstream in some way." 

今日は本当に特別な日になりました。14歳の頃、僕はベッドの上に寝ていて、何か主流なもので成功したいと望んでいました

 

“I wanted to show that people with disability can be elite at what they do. I wanted to show them that they can be normal people – get a job, have fun, have a partner, do all the things everyone else takes for granted. I just wanted to see people with disability succeeding in the mainstream, in the media. And today, this match was broadcast on every single TV in Australia.”

僕は障がい者でも、その道のエリートになれる、ということを示したかったんです。障がい者でも普通の人になれる、つまり、仕事を得たり、楽しみを持ったり、パートナーを得たり、他のみんなが当たり前と思っている全てのことができる、と示したかったんです。僕はメディアで障がい者が主流なもので成功する姿が見たい。そして今日、その試合はオーストラリア中の全てのテレビで放送されたんです。

アルコット選手は生後3ヶ月で脊髄腫瘍の為、対麻痺となり、その後、18歳でオーストラリアの車いすバスケの選手として北京パラリンピックで金メダルを獲得、2012年にバスケ選手として引退し、テニス選手として戻ってきた経歴の持ち主です。

全豪オープンの優勝は5年連続だそうです。

 

さて、その車いすテニスですが、出場資格条件は、

「走る動作を実行するのに生体力学的な永続的な障がいがあること」

で、以下の障がいが当てはまります。

・筋緊張亢進

・失調

・アテトーゼ

・四肢欠損

・関節可動域制限

・筋力低下

・脚長差

そのうち

1.オーバーヘッドサーブに制限がある

2.スムーズで連続的なフォアハンドとバックハンドに制限がある

3.車いす駆動に制限がある

4.ラケットを握るのにテーピングなどの補助が必要

5.体幹機能に制限がある

のいずれかを満たす場合には

「クァードクラス」 

に参加できるようです(2017 ITF Wheelchair Tennis Classification Manualより)

 

クァードクラスはウィルチェアーラグビーと似たような障がいをもつ選手が多そうな印象ですね。アルコット選手の場合は体幹制限が強そうなので、両上肢に障がいが無ければ、ウィルチェアーラグビーには出られないことになりますが。

ちなみに男子の部優勝のグスタボ・フェルナンデス選手は1歳半の時の脊髄梗塞の影響で左下肢麻痺があるようです。(なので上肢機能は正常)

 

今回はハイライトしか見れなかったので残念。

一度でいいから、4大大会のどこかで車いすテニス(特にクァード!)を見に行ってみたい!

パリ2024パラリンピック、競技種目決定!

こんばんわ。大坂選手、おめでとうございます!

21歳で全米、全豪の連覇って凄いよね。

 

さて、そんな中、東京の次であるパリ2024パラリンピックの競技種目が発表されました!

https://www.paralympic.org/news/paris-2024-ipc-announces-sports-programme

東京パラリンピックと同じ22種目です。

athletics, archery, badminton, blind football, boccia, canoe, cycling, equestrian, goalball, judo, powerlifting, rowing, shooting, sitting volleyball, swimming, table tennis, taekwondo, triathlon, wheelchair basketball, wheelchair fencing, wheelchair rugby and wheelchair tennis

 (ブラインドサッカーがfootball 5-a-sideからblind footballに代わってる!!!)

ウィルチェアーラグビーはもちろん残りました、ひとまず良かった!

 

その反面、CPサッカーは残念ながら東京に引き続き、落選。関係者、ファンの皆様には残念な結果となってしまいました。

競技数を23に増やすことについて、IPC会長であるアンドリュー・パーソンズさんは

”expanding the Games to 23 sports was not a viable option without growing athlete numbers beyond 4,350 or increasing costs.”(競技数を23種目に増やすことについては、選手数が4350名を超える数に膨らむこと、開催費用が嵩むことから、可能性のある選択肢ではなかった)

と述べています。

また、選手の男女比についても言及しており、

”if the sport continues to make progress and further develops the women’s game, then it will be in a much stronger position for inclusion in future Paralympic Games.” (もしこの競技が発展を続け、女性選手の試合を更に発展させれば、その時は将来のパラリンピック・ゲームズに含まれるより強い立場を得られるでしょう)

 と言っていますので、

「女性選手を増やしてください」

という明確なメッセージかと思います。

2028年のロサンゼルス・パラリンピックに向けてぜひ動き出して欲しいですね。

 

IPCの求めるものは

strong global appeal:国際社会への強いアピール

gender balance:男女のバランス

athletes with a wide range of impairments:高度なサポートを必要とする重度障害者を含む、幅広い層の障がい者の参加

です。

今回選ばれた22競技も、これらを満たさなければ除外されます。(いろんな事情もあるかと思いますが)

 

東京パラリンピックに向けていろいろと盛り上がってるかと思いますが、2020年以降もどんどん続いていきますので、本当に多くの方々に継続した支援をしていただきたいです。

 

そして、最後に…

やっぱりパリに行きたい!

A Happy New Year!

少し遅くなりましたが、

A Happy New Year!

ついに2019年を迎えました。

 

振り返れば、2018年は6月のカナダカップでの国際資格を取らせていただき、その為の準備として代表合宿にも参加させてもらう等、貴重な経験ができました。

高知・横浜でのリーグ戦、千葉での日本選手権に加え、東京都のパラリンピック選手発掘プログラム、日本パラリンピック委員会主催の研修会に参加したし、幅広い経験のできた1年でした。

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さて、2019年は国際クラシファイヤーとしての第一歩が始まります。

3月にはオーストラリアでの研修、夏にはアジア・ヨーロッパ・アメリカでの選手権大会が開催されます(どれかには行けるはず)

ますます海外に行く、そして、海外で仕事をする機会が増えるわけなので、

 

2019年はとにかく英語を勉強します!

当たり前ですが、国際クラシファイヤーには英語力が必須です。

これから国際資格を目指す人(興味がある人)は絶対英語の勉強はしておいたほうがいいと思います。

当面の目標は、

英検1級

です。

5〜6年前に準1級を取って以来、本格的には勉強してないし、準1級まで取ったんだから1級まで取っときたい。本当はIELTsの方が良いんでしょうが、受験料が高い…

医療系の論文はだいたい読めますが、普通の小説とか新聞を読むと知らない単語がやっぱり出てきてしまうので、そこを乗り越えたいと思います。

 

今年はウィルチェアーラグビー以外の競技のクラス分けについてももっと深く勉強していくつもりですので、しっかり発信できればと思います。

 

今年もよろしくお願いします!

走ってみて分かったこと

昨日の続き。

の前に、パラサポのWebマガジンに池選手の記事が載っていたのでシェア。

何度かお話しさせていただきましたが、丁寧で素敵な方です。

「ジェントルなキャプテン」

だって。

www.parasapo.tokyo

アメリカでの活躍の様子も知りたいですねー。

アメリカ国内リーグの情報ってどこかで見られるの?

Wheelchair Rugby – Demolition

Lakeshoreのチームらしいけど…

 

さて、昨日張り切って走った結果、今日は筋肉痛と倦怠感に苛まれました。

普段のトレーニング(4km)を超えて頑張りすぎて(とはいえ6kmですが)分かったことがあります。

 

・一番最初に痛くなったのは「背中(菱形筋)」→次に右の腿裏(ハムストリングス)と左の太腿(縫工筋!)

・ランニングとマインドフルネスなんて関連づけられますが、そんな感じがするのは30分以上走ってから

・距離が伸びるとフォームが崩れる。意識して戻そうとしてもできない!

・接地位置が悪いのが分かるけど足部の随意的なコントロールなんてやっぱ無理

ザバスを持ったまま走るのはやめた方がいい

・やっぱり距離とペースは少しずつ増やすべき

 

自分でやってみると本当にいろいろ気付くことがありますね。

レーニングすべきところが明確になるし、トレーニングじゃ解決できなそうなことも分かる。

11日は入谷式足底板セミナーに行くのできっと講師の先生とペアになった方が解決してくれるでしょう笑(よろしくお願いします!)

 

車いすスポーツに関わる場合も同じことが言えると思います。

理学療法士って普段車いすと押すことはあっても乗ることって少ないですよね?

車いすの駆動の仕方なんて学校じゃ習わないですし。

でも、自分が乗っていないと、どうして選手がああいう動きをするのか分からない気もします。

オススメなのが橋本大佑さんが講師を務める車いすインストラクター講習。

www.coil.or.jp

ドイツ式の車いす操作を体系的に学べるセミナーです。

本当に知らないことが多く、学びの多い研修会です。僕はこのセミナーで15cmくらいの段差は越えられるようになりました。

COIL | コ・イノベーション研究所 | 車いすインストラクター講習(初級)を開催します (11月23日・24日 つくば)

再来週につくばで開催されるそうです!

きっとこの経験が車いすスポーツ(ウィルチェアーラグビー)の観察をする上で役に立っています。

(ホントは競技スポーツとしてやってみたいですけどね。)

 

そういえば最近車いすに乗ってないなー昼休みに練習しよう。

 

君たちはなぜ走るか How come you run?

先月からランニングを始めました。

「趣味はランニングです」って言いたいから。

 

パラリンピック障がい者スポーツ)を通した共生社会に向け、スポーツ庁が掲げるスポーツ基本計画に

障害者のスポーツ実施率(週1)19%(2017年)➡︎40%(2022年)

という目標があります。

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スポーツ庁HPより)

スポーツ基本計画:スポーツ庁

 

健康寿命の延長やQoLの向上の為にも大事な目標です。

ウィルチェアーラグビーや卓球バレーに関わっていて一番目指したいのがココ。

 

ん?いや、待てよ。

自分、何もやってないじゃん!

 

筋トレしかしてないことに気づきました。

コーフボール、アーチェリー、バスケットボール、テコンドー…興味あるスポーツはいっぱいあります。でも、時間もお金もかけられない。

 

ランニングはシューズ代だけだ!

 

と閃いたのでランニングにしました。

そんなことを考えてる時にタイミングよく、雑誌Tarzanの特集が

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「君たちはなぜ走るか」

もう走るしかありません。

 

思えば、ウィルチェアーラグビーを通してトップアスリートの方々と出会う機会が増えました。一緒にご飯食べてても、弁当のシューマイを残してたり、ご飯を食べる量を管理してたり、もちろんトレーニングしていたり、健康管理は徹底されている選手が多い。

じゃあ、そういうアスリートから見た時に、好きなもの食べてトレーニングもしていないクラシファイヤーの言葉に説得力を感じるか、と考えた時、頑張って痩せようと思いました。

本業の理学療法士としても然り。

 

今年はカナダ行ったり高知行ったり遠征の多い1年でした。

遠征はやっぱり体力勝負。せっかくの遠征先で疲れてるのはもったいないですし、訪れた街でランニングするって憧れます。

 

アーユルヴェーダの勉強をして、ゆる〜く実践しているんですが、カパ体質の自分には運動が必要って分かりましたし、

 

どうせなら子どもの頃に苦手なものを克服しようと思った30歳。

苦手なものは持久走と水泳です。

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苦手だけど走ってみると意外と走れる!

だんだん走ってるうちに楽しくなってきました。

今日は調子に乗っていきなり6kmに距離を伸ばしてみたら、今まで気づかなかった身体の変化に気がつきました。

長くなってきたので、それはまた次回書きます。

 

障がい者スポーツに関わる(関わりたい)皆さん、自分自身もスポーツを楽しむっていうのもいいですよー!