発生学 embryology
以前の記事でパラリンピックに出場できる10種類の障害について紹介しました。
http://yukickoff2016.hatenablog.com/?page=1546871312
- Impaired muscle power:筋力低下、脊髄損傷や二分脊椎、ポリオなど
- Impaired passive range of movement:他動的関節可動域制限、先天性関節拘縮症など、関節炎のような急性症状は含まれません
- Limb deficiency:四肢欠損、切断や先天性の欠損など
- Leg length difference:脚長差、外傷や先天性によるもの
- Short Stature:低身長、小人症など
- Hypertonia:過緊張、脳性麻痺や脳外傷など
- Ataxia:運動失調、脳性麻痺など
- Athetosis:アテトーゼ(不随意運動)脳性麻痺など
- VIsual Impairment:視覚障がい
- Intellectual Impairment:知的障がい
この中でウィルチェアーラグビーを通して関わることの多い疾患は
1.筋力低下(脊髄損傷、神経筋疾患)と3.四肢欠損です。そして、最近、世界的に増えているのは7.運動失調です。
普段の臨床現場で出会うことがそんなに多くない疾患が多いのでまだまだ分からない事ばかりです。
特に先天性の四肢欠損に関しては、小児リハに関わることがない限り、あまり触れることのない疾患ではないでしょうか?
・指が2本しかないけど、この指は親指なのか?人差し指なのか?
・四肢の形成不全がある場合、座高(脊椎)の形成は正常なのか?
などなど疑問がたくさんありますし、クラス分けを行う上でその判断が鍵となることもあります。
というわけで、最近読んだオススメの1冊はこれ!
人体はこうしてつくられる――ひとつの細胞から始まったわたしたち
- 作者: ジェイミー・A.デイヴィス,橘明美
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2018/11/01
- メディア: 単行本
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国家試験というより、大学入試の時に勉強した記憶がある「発生学」
細胞分裂やら外胚葉やらが出てくるやつです。
その辺りから、手足の形成や発達について学び直そうと思い、読んでみました。
(ラングマンの人体発生学は高額なので、ハードルが高い)
1つの細胞が分裂する時に、どうやって真ん中を決めているか?
神経や血管、手足がどのように発生するか?
とても丁寧に分かりやすく説明されています。
一般的には
「DNAの中の設計図に従って身体って作られるんでしょ?」
という印象があるかもしれませんが(僕はそう思っていました)
人体の発生は、ほぼ全てに置いて細胞同士のコミュニケーションで成り立っています。
物理的なシグナル(お互いを引っ張る力や隣に何があるか、何もないか)や生化学的なシグナル(他の組織から来る分子)を受け取って、自分が次に何に分化すればいいか判断しています。
それだけで(と言ったらなんですが)、1つの同じ細胞から、身体中の多様な細胞に分かれていろんな機能を果たします。設計図もないのに、右腕と左腕はだいたい同じ長さになるし、極端に頭が大きくなったりしない。凄いですよね。
読めば読むほど、人体の発生は極めて巧妙で神秘的な仕組みによって成り立つことが分かります。DNAに「あなたは外胚葉だから神経になりなさい」「君は内胚葉だからこっちへ行きなさい」って指示されているわけではないのです。
僕は先天性四肢欠損について知りたくて読み始めましたが、再生医療に興味がある方も、発生学を学びなおすにはとても良い本だと思います。
かなり丁寧に作者さんは説明してくれて、「一般の方へ発生学を分かりやすく」というテーマの本かと思いますが、正直そんなに簡単ではありませんでした!笑
とても良い本でしたが、結局、先天性四肢欠損が起きる原因とか過程とかはよく分かりませんでしたので、次はラングマンの人体発生学へ進みます。
こういう学びが「科学的なクラス分け」に繋がると信じて!