「目の見えない人は世界をどう見ているのか」
読書日記②
「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を読みました。
著者の伊藤亜紗さんは美学の専門家。
「自分と異なる体を持った存在のことを、実感として感じてみたい」という変身願望を持つ著者が、視覚障がい者の身体論について語っています。
視覚障がい者のことを理解するために、目をつぶったり、アイマスクを使って体験することがあると思います。
でも、
"もともと脚が四本ある椅子から1本取ってしまったら、その椅子は傾いてしまいます。壊れた不完全な椅子です。"
"でも、そもそも三本の脚で立っている椅子もある。脚の配置を変えれば、三本でも立てるのです"
目をつぶるのは引き算。でも、視覚障害は引き算ではありません。
著者の主張は
障害を特別視するわけでもなく、福祉の視点で、「健常者がなにかをしてあげる」存在でもなく、障害を触れてはいけない、タブー化するものでもない
と言うことです。
つい、障がい者スポーツでも「凄い!」と言ってしまいます。
でも、「凄い!」という言葉には「(障害があるのにそんなことができるなんて)凄い!」というニュアンスが含まれています。
「凄い!」ではなく、「面白い!」、と好奇の目を向けるくらいがちょうどいいんじゃないでしょうか。
日本の文化と外国の文化を比べるような感じで。
それには優劣や蔑みはありません。
既にインクルーシブデザインでは、障害者をものづくりのプロセスに積極的に巻き込んでいます。その中で、障害者は健常者には無い視点を持った価値のある存在です。
このブログの文章の中でも「障害」と「障がい」をごちゃまぜにしています。
そんなことにこだわる人がいるから、
「障がい者スポーツの世界にはめんどくさい人が多い」
なんて言われてしまうわけです。
心理的な壁や社会的な壁を超えた、本当の意味での平等な社会、ノーマライゼーションをこの本を通して考えることができた気がします。
まだ視覚障害者スポーツに関わる機会はありませんが、視覚障がい者がどんな生活を送って、どういう風にスポーツと関わっているのか興味が湧いてきました。