理学療法士のパラスポブログ

障がい者スポーツを通してより良い社会の実現を!理学療法士に何ができるか考えます。理学療法士/中級障がい者スポーツ指導員/クラシファイヤー

「脳を鍛えるには運動しかない!」

読書日記①

ジョン・J・レイティさんの「脳を鍛えるには運動しかない!」を読みました。

 

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

 

 

最初はただの運動奨励本だと思っていましたが、全然違いました。
運動が脳に与える影響を科学的な観点から述べており、うつ病ADHD、ストレスに対する"副作用のない"治療法として紹介されています。
 
著者であるレイティ医師は、80年代にADHDを研究し始め、94年に「へんてこな贈り物」とい本を出版されています。(今度読んでみよう)
へんてこな贈り物―誤解されやすいあなたに--注意欠陥・多動性障害とのつきあい方

へんてこな贈り物―誤解されやすいあなたに--注意欠陥・多動性障害とのつきあい方

 

 

まさに、ADHDを初めとする発達障害の先駆者。
そういう先生が薬物療法だけに頼るのではなく、運動療法を重視しているのに驚きました。
わたしが望むのは、本書で述べてきたすべてがあなたを勇気づけ、あなたがテレビのリモコンのかわりにジム用のバッグを握り、スポーツを観戦する側ではなくフィールドに立つ側になってくれることだ。
この本を通して、運動療法の効果だけではなく、運動療法の効果に対する信頼と情熱をレイティ先生から感じました。そして、それは医師以上に理学療法士が持つべきもののように思います。
 
運動の効果
  1. 心血管系を強くする
  2. 燃料を調整する
  3. 肥満を防ぐ
  4. ストレスの閾値を下げる
  5. 気分を明るくする
  6. 免疫系を強化する
  7. 骨を強くする
  8. 意欲を高める
運動することで、前向きな気分で健康的に生きていくことができるようになります。
 
この本の中では発達障害精神障害について述べられていますが、それだけでなく、身体障害や健常者いおいても、前向きに人生を歩んでいくために運動は大きな力になります。
 
 
僕がこの本を読み始めてから、自動車通勤を辞めて、自転車通勤になったことは言うまでもありません。
普段あまり運動しない人には特にオススメです^o^

日本障がい者サッカー連盟

4月1日に、「日本障がい者サッカー連盟」が発足しました。

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JIFF: 一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟

JIFF;Japan Inclusive Football Federation

(「障がい者サッカー」と“Inclusive Football”では随分響きが違う気もしますが(^^; )

 

とにかく、そういう連盟ができたのは素晴らしいことだと思います。

会長は北澤豪さん。

 

どんな障がいがあっても、サッカーを通じて繋がれる。

障がいの有無を問わず、同じ競技をプレーして、応援できるってのはまさにインクルーシブだと思います。

 

ただ、連盟を作ることが目的ではなく、何をするかが重要です。

障がい者サッカーハンドブックによると、47都道府県のうち、選手もしくはチームがあるのは、

知的障がいサッカー;32/47

聴覚障がい者サッカー;23/47

脳性まひ者サッカー;19/47

ブラインドサッカー;11/47

アンプティーサッカー;6/47

パワーチェアサッカー(電動車いす);23/47

ソーシャルフットボール(精神障がい者);30/47

と、47都道府県どこでも、だれでも望めばチームに練習環境にアクセスできるわけではありません。

 

サッカーに関わらず、障がい者スポーツが選手不足なのは卓球バレーの記事の時に書きました。

でも、野球やバスケ、ラグビーなど他の競技と競技人口の確保を争うのは健常者でも同じ。

そこでより重要性を増すのが、プロスポーツ

「サッカー」という競技が面白ければ面白いほど、健常者でも障がい者でも、参加したいと思う人は増えるはず。

 

あとは、「やりたい!」と思う人がいたとしても、指導者がいなければ難しい。

本格的な指導はJFA公認指導者や障がい者スポーツコーチの仕事になると思いますが、窓口となる初級・中級障がい者スポーツ指導員の役割も大切になってきます。

障がい者スポーツ指導員と公認指導者のダブルライセンスの人も増えると良いですよね。

 

もう一つ期待することは、Jリーグクラブによる本格的な障がい者サッカーへの支援です。

横浜Fマリノス・フトゥーロのように、Jリーグクラブが障がい者サッカーを金銭面・技術面・環境面で支援してくれれば、よりアクセスしやすくなります。

岩手県障がい者サッカーチームも「グルージャ盛岡・○○」みたいな。

そのためにも、やっぱりプロチームにはもっと強くなってもらわないといけませんね、特にグルージャ

 

将来的には障がい者サッカーも、日本代表と同じユニフォームを着れる日が来るんでしょうか。

そんな日も楽しみに待ちたいと思います(^O^)

陸上競技審判講習会

1ヶ月振りの更新となってしまいました。。。

4月から職場が変わるにあたり、結構バタバタしてました。

先月から今までの間に、「中級障がい者スポーツ指導員」の認定証が届き、4月から指導員として新たな1年が始められます。

 

さて、今日は宮古市陸上競技協会様主催の「陸上競技審判講習会」に参加させていただきました!

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会場はシーアリーナの横にある舟型ビル!

家から近くてホント便利です。

 

「あいつが陸上競技?」という声が聞こえてきそうですが、確かに陸上競技なんて苦手すぎてやったことがありません。

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でも、去年は岩手県障がい者スポーツ大会で幅跳びのサポートをさせていただき、今年は国体や全国障がい者スポーツ大会もありますし、陸上競技に関わる機会もあるかもしれません。

陸上やサッカー、バレー、卓球など、ほとんどの障がい者スポーツは健常者と同じルールを基本としていて、障がいに配慮した部分だけ変更になっています。(合理的配慮ってやつですね)

なので、元の競技のルールが分からなければ、障がい者スポーツのルールも理解できないってわけです。

というわけで、陸上競技についてお勉強です。

 

今まで知らなかったことが結構ありました。

まず、第144条に「診療、治療、理学療法は~」と書いてあり、理学療法について明記されていること。選手に関わって良いのは招集所まで。

競技前でも招集所を出た後は、介助や手助けをすると「助力」になってしまい、失格だそうです。要注意。

 

スパイクに関して、靴底や踵の厚みにまで規定があるんですね。

走高跳走幅跳:靴底の厚み13mm以内

走高跳:踵19mm以内

 

テーピングについては審判長判断で、“望ましい物”であるかどうか次第。

気を付けなければいけないのは、投擲種目。

「2本またはそれ以上の指にテープを巻くこと」は助力とみなされてしまいます。

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つき指や骨折してもM.Neuer(Bayern Munchen)みたいにはできないんですね。

 

 

それ以外の内容についてはとにかくルールブックを読んで覚えるしかないな、と思いました。

今日の講習会は来年度に向けた修改正点についての説明が主だったので、陸上初心者の自分には分からないことも多かったです。詳しいルールなんかはやっぱりルールブックを見て覚えるしかありません。

そのきっかけとしてはとても良い機会でした!ありがとうございました!

 

 

知的障がい者サッカーは予選会やリハーサル大会には出場しないので、その分、陸上チームや他の競技のお手伝いができないかな、と考えています。

そのためにもルールや競技特性といったスポーツのことはどんどん勉強していきたいですね!

「現場で良く起こる外傷の初期対応」

今日は、車で3時間かけて北上市へ行ってきました。

ランチは農家レストランさん食亭さんで。

tabelog.com

味も値段も景色も素敵でした!

カレー食べすぎた!

 

お腹も満たされたところで向かったのが、

「達人に学ぶセラピストの会inいわて」さん主催のセミナー。

https://www.facebook.com/tatsujin.iwate/?fref=ts

テーマは「現場で良く起こる外傷の初期対応」について。

スポーツ系のセミナーに行くのってかなり久しぶりでした。

 

講師は小菅智美さん。

第22回FNSドキュメンタリー大賞 - フジテレビ

O谷選手を育てたお方だそうです。

でも、セミナーの中では「有名選手を治療した」なんて話は一切出てきませんでした。

 

現場で外傷が起きた時の原則は

「PRICE」

P:Protection

R:Rest

I:Ice

C:Compression

E:Elevation

です。

それを基に、

マレットフィンガー、鎖骨骨折、肩関節脱臼、大腿肉離れ、足関節捻挫

などの対応を学びました。

 

一応、テーピングやイングランドサッカー協会プロトコルは学んできましたが、今回の先生が柔道整復師であるとのことで、

「包帯」

を使った固定方法を初めて教えていただきました!

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テープより扱いが難しかったですが、結構使えるんですね!

 

テーピングを使った固定でも良いんだと思いますが、

テーピングは1本300~400円。一度使ったらまた買わなきゃいけません。

でも、包帯は1本170円くらい。繰り返し使えます。

 

プロチームはじゃんじゃんテープを使っても良いんでしょうが、予算の限られるチームではコストを考えることも必要です。結構持ち出しで頑張ってるトレーナーさんも多いようですし・・・

 

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骨折の時に使うソフトシーネは1300円くらい。これも繰り返し使えます。

Amazon.co.jp: オオサキ ソフトシーネ M 1本入: ドラッグストア

 

ただ、何でも安ければいいというわけではなく、安かろう悪かろうということがあるわけです。それぞれの特徴を理解して、理学療法士/トレーナー自身がしっかり選ばなきゃいけないですね。

 

基本的には怪我や外傷が起きないようにすることが大事です。

足が攣らないように練習中から塩や黒砂糖の摂取を促したりしているそうです。

 

それでも

万が一に備えて、道具や技術を準備しておく必要があります。

  

そういった言葉や姿勢を一番学ばせていただきましたm(__)m

改めて日頃の準備や練習の大切さを実感させていただきました。

実技中心で、カレーを食べすぎた後でも全然眠くならないセミナーでした。

 

宮古でもテーピングや包帯の練習会を企画しよう!

フィジカルテスト

最近はずっと宮古は寒いです。でも、盛岡は宮古より3℃くらい気温が低いです。

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いつも使っていたグラウンドもすっかり真っ白。

寒すぎて、岩手の中でも宮古で良かったと心から感じます。

 

そんな寒い盛岡で、フィジカルテストを行ってきました。

先週は雪で断念しましたが、今回は道中、雪もなく、無事に盛岡へ到着。

 

測定項目は、この先も測定し続けられるように、

・身長/体重

・握力

・立ち幅跳び

・20m走(ボールあり・なし)

・ステップ50

・シャトルラン

とシンプルに。

 

Physical Performance of Individuals With Intellectual Disability: A 30-Year Follow-Up

www.ncbi.nlm.nih.gov

という先行研究によると、
中等度の知的障がいのある成人(男性33名、女性44名)を30年間調査したところ、男性はちょっと太り気味で、女性は肥満体でした。知能指数(IQ)の影響は、バランス能力と手先の器用さに大きく影響していました。性差は大きかったですが、IQに照らし合わせるとダウン症候群では差はなかったそうです。

 

サッカーができる岩手FIDの選手はおそらく、中等度ではなく、“軽度”の障がい、と思われます。BMIはバラツキが大きそうですが、確かにバランスや器用さには問題がありそうです。筋力や持久力は個人差は大きそうですが、優秀な選手は結構優秀。

特に気になったのは、クロスステップやサイドステップに難渋する選手が多く、切り返し動作に時間がかかっていること。やったことない動きをテストするのもどうかと思いましたが、その結果をどう判断するかはこれからの課題です。

 

チームに関わり始めてから、なんとなく感じていたことも、今回こうやってテストをすることで明確になってきます。半年後や1年後に再測定することで、選手の成長も分かります。

提案に応じてくださり、当日も測定してくださった監督やコーチに感謝します!

結果をまとめて、早めに選手・コーチにフィードバックできるよう頑張ります。

 

フィジカルテストの次はフィジカルトレーニング!ということで、練習中に体幹トレーニングも始まっています。

プレーの面ではお手本は見せられませんが、トレーニングくらいちゃんと見せられるよう動かねば…

  

 

Return to Life Through Contrology ?リターン・トゥー・ライフ・スルー・コントロロジー? ―ピラティスで、本来のあなたを取り戻す!

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卓球バレー

今日は岩手県知的障がい者サッカーチーム(岩手FID)でフィジカルテストを行いました!

 

と言うつもりでしたが、朝から宮古市は雪。盛岡へ出発しましたが、山間部は真っ白。

道路の線も見えませんし、慣れてない雪道を走るのに恐怖を感じましたので、コーチや選手には申し訳ないですが、行くのを断念しました。

 

 

知的障がい者サッカーだけでなく、その他の障がい者スポーツでも一都道府県に1チームというのが多いように思います。車イスバスケも、ツインバスケも、岩手県には1チーム(それも崩れてきているようですが…)。

他県ではどうか知りませんが、特に岩手は広いですし、盛岡市(県庁所在地)以外での障がい者スポーツって結構厳しいんじゃないでしょうか。

宮古市のような沿岸部の障がい者はやりたくてもチームに参加するのが難しいですし、チームも選手を集めるのが大変です。

 

 

そこで登場するのが

「卓球バレー」

です。

卓球バレーとは、バレーボールを基に考案された、卓球台を使ったゴロ卓球です。

卓球台を各チーム6名の計12名で囲み、椅子に座ったまま、木製の板(ラケット)で、音の鳴る卓球球を打ち合います。

全員が椅子に座ってプレーするので、車イス使用者でも同じように参加できます。そして、選手が転倒する危険性も減るため、指導者がとても楽です(笑)

卓球球から音が鳴るので、視覚に障がいがあっても参加できますし、基本は全員片手でラケットを持ちますので、片麻痺でも条件は同じです。両手で持てば重度障がいの方でも参加できます。手が難しい人は足や口でラケットを持つ人もいるようです。

高齢者から子どもまで、障がいの有無や種類を問わず、誰でも楽しめます。

 

最初は卓球バレーのことを先輩OTから聞いた時は、「そんなもの、楽しくなさそう」って思ってましたが(申し訳ない)、ふれあいランド岩手でのボランティア養成講座の中で体験したところ、つい夢中になってしまうくらい、楽しかった!

 

本当に誰でも楽しめるスポーツですので、どんどんチーム数が増えています。

盛岡だけでなく、宮古はもちろん、他の沿岸部にもチームができました。

全国的に増えすぎて、指導者や審判の数が足りてないようです。

 

それくらい、卓球バレーは障がい者スポーツの常識を覆しているようです。

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めじろんも(2008大分)

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ちょるるも(2011山口)

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ちいちゃんも(2015和歌山)

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わんこきょうだい(2016岩手)も卓球バレーに夢中です。

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はぴりゅう(2018福井)もきっと夢中になるはず。

アジアや南米でも広まりつつありますし、今後の展開が楽しみです!

障害予防プログラム 11+

岩手県知的障がい者サッカーチームでは、今年の希望郷いわて大会(全国障がい者スポーツ大会)に向けて、フィジカル強化プログラムを開始します。

 

昨日紹介した「タニラダー」も導入したいと思っていますが、まずは基本的な筋力・バランスなどを改善する必要があると感じています。

そこで導入予定なのが、FIFA医学評価研究センター(F-MARC)が開発した

11+

です。

FIFA 11+ | a complete warm-up programme

 

ウォーミングアップとして、20~30分で行えるプログラムで、ランニング・筋力・プライオメトリクス・バランスなど多くの領域がカバーされ、バランスよく運動を行うことができます。

障害予防やパフォーマンス向上の科学的根拠も確立しつつあり、多くの報告が上がっています。

https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&q=FIFA+11%2B&btnG=&lr=

また、日本語版のポスターや小冊子、動画が無料で見れますし、選手や家族に配布するのも簡単です。

メディカルインフォメーション|JFA|公益財団法人日本サッカー協会

 

理学療法士(トレーナー)として新たなプログラムを作っても良いんですが(結局同じようなものが出来上がる…)、誰でもアクセスできるものの方が広まりやすいし、継続しやすい。知的障がい者を対象にしても効果が出ると報告できれば、知的障がい者サッカー全体へも貢献できるのではないか、とも考えています。

 

サッカー関係者ではすでに多く知られている11+ですが、きっと他競技に関係する人や障がい者スポーツ関係者にはまだまだ知られていない印象です。

他競技でも11+を導入して効果が上がっているようなので、ぜひ参考にしてみてくださいm(__)m